楽人の会相互訪問続き 陶ときやす  2019年6月

6月15日 楽人の会第2回相互訪問の最後は、時安地区の「陶ときやす」藤田さんを訪ねました。藤田さんは陶芸家です。島根の陶芸の専門学校で修行を終えられて、神石高原町時安の地で2018年6月に開業。

古い唐津、信楽の雰囲気を大切にした作品作りを心掛けていらっしゃるそうです。

陶芸の知識について、さも私が知っているかの様な書き方になったところもあるのですが、全て今回藤田さんに伺った話です。私の聴き違いでおかしな事を書いていたらお許し下さい。

陶ときやすに到着しました。

雨に濡れたエントランスのさつきが目にも濃く鮮やかです。

うす緑のは紫陽花です。こんな色のがあるんですね。

ご自宅と工房、さすがは芸術家とため息の出る外観です。

薪が見えます。

ここで焼かれる陶器は信楽焼(しがらきやき)と唐津焼です。陶器の名前の由来は土地の名前なのですが、正確にはどこで採れた土で焼くかです。時安で焼いても時安焼とは言わないのです。

信楽焼

釉薬(うわぐすり)を塗らずに焼きます。釉薬を塗らないのに出る表面の艶は、灰と長石が窯の高熱で化学変化を起こして出来るものです。長石と言うのは、信楽の土に含まれる白い石です。唐津焼の様に艶がある所と無い所の境目が出ない理由です。

窯の中の置き場所によって温度が違うため、陶器の場所によって色が変わります。それが風合いになります。
白いぷつっとしたのが長石です。

唐津焼

電気窯で一度素焼きをしたうえで、釉薬を塗ってからもう一度焼くそうです。

裏側に出来るシワは「ちりめんじわ」と言って、風合いを醸す為に、敢えて出る様にするそうです。

釉薬を塗るので艶のある所と無い所がくっきりと別れていますが、このラインは敢えて曖昧にする事もあります。そう言うのを自然釉と言うそうです。

底のシワがちりめんじわ。どうしても出てしまうものかと思ったら、敢えてシワが出る様にするとは、へえぇっと思いました。

下の写真の様な、口縁(口を当てる縁)の黒いラインは皮鯨(かわくじら)と呼び、唐津焼でしばしば用いられる模様です。また、胴の部分に丸い模様が有りますが、こう言った模様を含めた絵を描いた唐津焼の総称を絵唐津と言うそうです。

絵唐津と口縁の皮鯨。

窯も見せて貰いました。窯には「登り窯」と「穴窯」が有ります。

登り窯は均一な焼き上がり、穴窯は置く場所によって風合いが違って来るそうです。

つまり登り窯は生産性重視、穴窯は芸術性重視と言う事かなと思いました。藤田さんの窯は穴窯です。

なんとこの窯、藤田さんの手作り。周りの土は佐官さんに塗って貰った所もあるそうです。窯の専門家に相談したら、自分で設計して自分で作った方が理解も深まると勧められたそうです。

黒く煤が立ち登っているている所が薪をくべる穴です。この面が平らですが、窯作りの業者が作るとここが平面でなく丸く出っぱるのだそうです。

ここから薪をどさっと投げ込むと、灰がぶわぁっと舞い上がります。この灰がかかって、長石と共に高温で化学変化を起こして艶を出すのが、信楽焼の焼き方だそうです。

穴窯は上と言うか、後ろの方は温度が低いので、後半には後ろの横からも薪をくべるそうです。薪は杉や檜ではいけません。温度が充分上がらないのです。油を含んだ松でないと温度が上がらないそうです。

焼きは最低でも3日間。絶え間なく薪をくべ続けなければなりません。そうして温度を1250度から1280度に保つのです。この為一人では無理で、仲間同士で助け合いながら行うそうです。つまり窯に火を入れて陶器を焼くというのは、年に何度かしか出来ない相当な事なのだそうです。

窯の奥側は温度が低くなるので、後半は後ろの横からも薪をくべるそうです。

また、薪も大量に必要で、その確保にはご苦労様もある様です。

ギャラリーも見学しました。

工房や窯とは全く別棟のギャラリーも見学させて頂きました。

日常的に使えるものもたくさんありました。

手前側のが1300円くらいだったと思います。
こっち側のは1600円くらいだったと思う。
これは唐津焼ですな。分かる様になって嬉しいです。

お皿に見える跡は貝殻の跡です。

窯の面積は限られているので、お皿などの場合小さな貝殻を3個から4個置いて、その上に更にお皿を重ねるのだそうです。

これは貝殻の跡が3個。4個のも有りました。
確かに貝殻です。

今まで焼き物には興味は無かったと、言うより関わりが無かったのだすが、藤田さんと出逢う事で陶芸を身近に感じました。私の中に新しい世界観が生まれた事が嬉しいです。豊さってこう言う事だろうなぁ。

最後に。石の粉を練って焼いたのが磁器、土を練って焼いたのが陶器だと妻に教わりました。

いつものくるま屋神石高原町 山本自動車工業

この記事を書いた人

山本 宰士

山本 宰士

山本自動車工業株式会社 代表取締役

広島県神石高原町のくるま屋です。