ヴォクシーのブレーキが効きっぱなしになっていました。この症状をブレーキの固着と言います。
法改正と車検の多様化
平成7年の車両法改正から車検の整備や点検項目が大幅に削減されました。当時国会でも議論され、それまで必須とされていた、ブレーキ装置の一部であるブレーキキャリパーのオーバーホールも無駄な整備と言う解釈で、分解して目視点検で異常が無い場合、測定して数値が正常ならば、保安基準を満たすという判断がされ、車検は合格することになったのです。
この制度改正を活かしたのが、短時間で大量の台数をこなす車検専門店のビジネスモデルです。取り敢えず安く早く車検を通したい方には、とっても向いたシステムです。低価格を求めていらっしゃるお客様が多いことは紛れもない事実で、今日の短時間低価格車検の台頭を後押ししています。
効いたままのブレーキ
それでは我社の行う車検はどうなのか、、、
前置きが長かったのですが、、今日のブログは車検させて頂いたお車のブレーキが完全に固着していたお話です。右後ろのブレーキだけがが効きっぱなしになって、パットが完全に擦り減って無くなっていたのです。
この状態では車検は通りませんし、安全上はもちろん経済的にも看過出来ません。お客様に説明し、ブレーキキャリパーと言う装置のオーバーホールをする事になりました。
※オーバーホールは日本語で「総分解整備」
運転席でブレーキのペダルを踏むことで、ブレーキオイルがぎゅうっと押し出され、その力でブレーキパットがブレーキディスクをギュッと挟み込み、車輪を止める様に働きます。
この時ブレーキパットを「ギュッ」と押さえているのが、ブレーキオイルの圧力を受けたピストンです。ピストンはブレーキオイルの満たされたシリンダの中をほんの僅かに往復するのですが、固着というのは、このピストンとシリンダーの間に発生した汚れや錆びの為、動きが悪くなって起こる症状なのです。
※ブレーキキャリパー装置と言うのはこれらの集合体を指します。写真は固着したキャリパーをオーバーホールしているところです。
ブレーキディスクの加工
法定点検項目だけでは固着予備軍は気付きにくい
今回は右後ろのパットだけが異常に磨耗していました。このため法定点検だけでキャリパーの固着に直ぐに気付くことが出来ました。症状がここまではっきりと進むことはそう多くはありません。
このため「固着予備軍」は法定点検だけでは気づかない場合も多いのです。
1番の違いはここ
ですから我々の工場では、法定項目から一歩踏み込んで、パットを取り外した後キャリパーがスムースに動くかまで1台1台確認するのです。
この部分が、車検だけでなく整備を主とする我々の工場で行う車検と、車検に特化してフランチャイズを展開する短時間車検との大きな違いなのです。
お得意様が殆どという事もあり、今ではこの違いの説明を求められることは多くありません。「いつもは福山で安く済ませてるので、今回はよく見て欲しいので山本自動車に出す」と言われることもある様に、短時間車検との違いを何となく認識しておられているのです。
このことから、弊社に車検にお預け下さるお客様は、そもそもこういった法定項目から一歩踏み込んだ点検や整備を望まれている方が多いことが分かります。
ブレーキの点検だけでなく、その他にも例えばベルトの張り調整や、錆びの進んだブレーキディスクローターを外しペーパー掛けをしたり、ブレーキドラムをペーパーで磨いて洗浄します。
お車が安全であるために必要だと判断すれば、軽微な整備は料金内で行うのです。多くの方が当然のごとく低価格を望まれる中で、お客様の安全と安心、そして経済性のために何ができるのか私たちは常に考えています。そのために整備技術や、説明スキルの向上に努めています。