孵卵器に移してからは毎晩卵の観察です。
とにかく卵が生きてる事を確認したいのです。
妻などは孵卵器の前に座ると2時間くらいは動きません。
卵を凝視しているのです。
始めの頃は、もうダメなのかも知れないと言う思いもありました。でも動くと生きてる事が確認出来ます。
日が経つにつれ、あれが動いた、こっちのが動いたと、生きてる事が確認出来る卵が増えて来ました。
手伝って生まれた。
最初に動き出した卵がいよいよ生まれそうです。
中から突っつき始めたのです。
ところがそこからが長く、何時間経っても状態が変わりません。
これが普通かも知れないのですが、あまりに時間がかかるので、見かねた妻は少し手伝ってやったそうです。
そしてこの状態でまた6時間。
自分の力で少しは進歩した様ですが、まだ殻の中で思う様に動けない様子です。
細い声で時々「ピーピー」としんどそうに鳴きます。
出して欲しそうにも聞こえます。
初めはチビっと見えてただけのクチバシが、だんだんと良く見える様になって来ているので、前進してるのは分かります。
それでも「薄皮がくっついて出て来れないのではないか」と言い心配する妻の意見を尊重し、結局夜11時を過ぎて、最後まで手伝ってやる事にしました。
このままでは死んでしまう様な気がしたからです。
怖がっているよう。
左手に包む様に抱いて、ハサミやピンセットで殻を少しづつ取り除きました。
振り絞る様にひときわ激しく鳴きます。
それでも「ピーピー」と細い小さな声でした。
恐怖にあらがっている様にも見えます。
「よしよし、よしよし、」と言いながら少しずつ少しずつ殻を脱がせてやりました。
ずっと寝たまま。
最初の子は、こうやって私の掌で産まれました。
脚をバタバタさせていました。
暖かい孵化器の中に戻してやると、さっきまで縮こまっていた身体を少しだけ伸ばしました。
私達も初めてでよく分からなかったのですが、今思うと全く元気のない赤ちゃんでした。
写真では分かりにくいのですが、お尻のところに殻のかけらが付いたままです。
へその緒です。
時々は寝返ったりはしますがずーっとこんな状態です。